4キャリアに関わる「関係性」の分析
4.1 自分、仕事、家庭の三者関係は?(関係性の認識の違いを意味)
(1)関係を認識するということ
言うまでもありませんが、私たちは決して1人で生きているわけではありません。いろいろな集団に所属し、さまざまな「関係」の中で生きています。
いやいやそんなことはない、自分はどこの集団にも所属していないと思っている人も、実態として地域社会の一員であることを否定することは出来ませんし、その社会の中で買い物をしたり、遊んだりと、生活をしています。この生活空間の中で、結果的にさまざまな関係が生じ、その関係の中で生きているのです。
また多くの人は、家族や社会の中のさまざまな集団(学校、会社、サークル等々)に所属し、その集団の関係の中で生きています。まず自分がどんな「関係」の中で生きているかを認識することが重要です。ところが、そのさまざまな関係の質の認識の仕方には大きな個人差があります。
例えば、親子関係一つとっても、自分にとって親との関係は何なのかといったことは、1人ひとり異なったものになります。ある人にとっては自分の親は自分の生活を全面的に支えてくれる人であり、案外、依存的な関係になっているかもしれません。また別の人にとっては自分の親は自分の行き方を阻害する、対立的な関係になっているかもしれません つまり「関係」は物理的なあり方が問題なのではなく、その関係を形成している当事者の認識の質の問題が重要なのです。自分がその関係をどう認識しているかによって自分の人生にとっての意味がまったく変わってくるのです。
(2)関係を絵で描いてみる
数学の集合論の中に「ベン図」という概念があります。
これを「関係の認識」に当てはめるとこんな具合になります。例えば自分と家族という2つの関係を例にとると、まず自分という円を描きます。大きさは適当でいいです。次にその円に家族という円を重ねます。すると家族という円の中に自分という円がすっぽりと入ってしまった絵になる人もいれば、2つの円が部分的に重なる絵になる人もいます。またその重なり具合も人により微妙に異なります。あるいは2つの円が接することもなく離れている絵を描く人もいます。このような絵が3種類目の前に示されれば、皆さんもそれぞれどんな関係性を意味しているか、何となく分かりませんか。と言うよりも、それを分析してほしいのです。これを関係性分析といいます。
1の絵は、家族から離れられずに依存的になっている自分が見えます。あるいは非常に居心地が良く、家族といっしょにいると安心している自分、さらには家族に捕らえられてしまいもがいている自分がいるのかもしれません。
第2の絵は、何が重なり合った部分になっているのかを分析すると良いでしょう。家族からの経済的な支援だけが重なり部分になっているのか、もう少し深い人間的関係がその重なり部分に存在しているのか、それにより、自分が家族をどんな存在として認識しているかが見えてきます。
第3の絵は、家族から自立した自分、あるいは家族を精神的に拒絶してしまった自分が見えてくるかもしれません。
(3)自分、仕事、家庭の3つの円でベン図を描いて見る
ベン図を描き、それに対して自己分析するのに少し慣れたら、この3つの円によるベン図を描いてみてください。
これからの自分のキャリアを考える時に、まず自分にとって仕事とは何なのか、そのことを知るためにこの2つの円を描くことは重要な意味を持っています。
またこれからキャリア形成を通じて自立して行く自分にとって、家族とはどんな存在になるのか、さまざまな人間との関係性を分析する原点として、家族との関係性分析は大切な意味を持っています。
2つの円のベン図に比べると、3つの円のベン図は難しさが倍増します。
まず2つの円を描き、それに3つ目の円を重ねてみてください。その結果、何となく違和感があれば、何度でも書き直してください。その書き直しのプロセスこそ、もう関係性分析が始まっているのです。