前回、自分の目標・課題設定と自分の欲求について触れました。一体、自分は何を求めているのだろうか、何を望んでいるのだろうか、非常に悩ましい問題です。そして今ここで悩んでいる自分はどのような経緯を通してここに到達したのでしょうか。そのことを知るための1つの手掛かりがヒストリー分析です。
人が悩むのは、何かは満たされているけれど他の何かが満たされていないからです。全て満たされていれば悩みもありませんし、何も満たされていなければ同様に悩みはありません。
何かが満たされ、何かが満たされていないのは、そのように生きてきたからです。皆さんは今までの人生の随所でさまざまな選択をしてきました。何かを選んだということは何かを選ばなかったということです。そのことの繰り返しによって、時間の経過と共に満たされているものと満たされていないものが生じたのです。
同時に、過去の時点で何かを選び何かを選ばなかった自分は、何故そちらを選び他方を選ばなかったのでしょうか。恐らくその時の自分に何らかの選択基準があって、それに従って選択したのでしょう。しかも、その選択基準の不変性が高いと同様の選択が繰り返され、時間と共に充足度の顕著な差が生じるのです。
それでは、そのような選択基準はどのようにして形成されたのでしょうか。それも過去の人生経験の中に根拠があるのです。
さあ、それではヒストリー分析をスタートさせ、自分の「人生の選択」について気づいていってください。
まず学生時代の分析は学年ごとに分析シートを作るのが良いでしょう。分析項目としては、
- サークル活動、部活動等、何か夢中になって取り組んだこと
- その年に得た専門知識、技術、技能、語学等
- その年に強く印象に残っている出来事
- 当時の大きな関心事・興味
- 現在でも続いている人間関係
- 当時描いていた将来の仕事、職業
分析に当たっては「何を」を記入しながら「何故」を考えてください。何故そのことに夢中になっていたのか、何故そのことを一生懸命勉強したのか、何故そのことが印象に残っているのか、何故そのことに関心・興味があったのか、何故その人間関係が続いているのか、何故そのような将来を描いたのかということを考えることが気づきを促進するのです。 社会人になってからの分析項目は以下のとおりです。会社、所属、仕事の内容が変わるごとに別シートを作って分析すると良いでしょう。
- 所属部門と部門の仕事内容
- 所属部門での担当職務内容
- 所属部門での地位、ポスト
- 担当職務における主要実績
- 職務担当中に得た専門知識、技術、技能、語学等
- 部門在籍中に影響を受け、今でも続いている人間関係
- その当時の大きな関心事・興味
- 当時描いていた将来の夢
社会に出てからの仕事は自分で決めることが難しいので、そのことの選択というよりも、その経験を通して何を考えていたかということに分析の軸足を置いてください。
同じ仕事を担当していても、その人の意識のもち方によって経験から得られるもの、満たされるものは変わります。
以上のヒストリー分析を通して、今までの自分が何を考え、その結果どのような人生の選択をし、その結果、何が得られ、満たされ、満たされなかったのかを自覚してください。