ヒストリー分析を行うと自分の中にさまざまな蓄積があることに気がつきます。その現状を整理し、それを自分の将来のキャリアデザインにつなげていく作業が経営資源分析です。
まず蓄積資源は次のように分けて考えると分かりやすいです。これらを経営資源分析表の横軸にとると良いでしょう。ただし、どの資源がどの分類に属するかということはあまり大きな問題ではないので、そのことで考えすぎる必要はありません。要は蓄積した資源がどこかに記入されれば良いのです。
- 経験的資源(経験したこと自体が自分の貴重な資源であること)
- 能力的資源(この中にはいわゆるスキル(技術、技能的なもの)も含みます)
- 知識的資源(各種専門知識や保有資格等の蓄積)
- 人的資源(これは次の節の人脈マップ分析を済ませてから分析します)
- その他の資源(自分の性格特性や財産、社会的地位等の資源)
次にこれらの切り口から資源分析をする視点は次のとおりです。これらを経営資源分析表の縦軸にとると良いでしょう。
- その資源を現在も有効活用中であると同時に、将来も有効な資源
- 現在は活用していないが、もう一度磨けば、将来有効に使える資源
- 現在までに蓄積がなく、将来のことを考えると今後、開発、蓄積が必要な資源
この分析視点を見て気がつくでしょうが、経営資源分析はあくまでも「自分の将来のキャリアデザインにつなげていく」ことが目的なので、将来のビジョンやイメージが何もなければ分析はできません。現在の資源の蓄積状態をただ分類・整理することが目的ではないことを理解してください。
もしも将来のビジョンやイメージがない場合は、ここではヒストリー分析で気がついたことを経営資源分析表の中でとりあえず整理をしておいて、第5章を読んでから再度、分析を試みてください。
まず記入された経営資源分析表全体を見て、自分の蓄積した資源の偏りとその原因に気づくことが必要です。
例えば知識的資源は豊富だが経験的資源が乏しい場合は、頭ではいろいろ知っていても実際に経験したことがないということを意味し、それは勉強はしてきたけれども、経験する機会がなかったかもしくは経験するまでの行動力がなかったのかもしれません。
あるいは現在有効活用中の資源は豊富だが少し磨けば使える資源が乏しい場合、自分の経験や学習が狭い範囲にとどまっていたことが考えられます。
このような気づきが、次のキャリアデザインへ向けて自分の課題を提示してくれるのです。
次の気づきの観点は、今後どのような資源開発を行うかということです。特に過去の経験、学習が不十分な場合は、経営資源分析表の中でも「現在までに蓄積がなく、将来のことを考えると今後、開発、蓄積が必要な資源」が多くなるものです。
これはいわゆる資源の偏りとは違います。問題は将来のビジョンやイメージが明確になった上でこの分析がされているかどうかということです。単にあの経験が足りない、能力が足りない、知識が足りない、だからこれから開発しようという視点では、大げさな言い方をすれば無限の資源開発を迫られることになります。そうではなく、あくまでも将来のビジョンや目標を達成するためにはこの資源が不足しているという視点が不可欠です。ここのところは大切なところなのでよく理解してください。
そして最後の気づきの観点は、資源開発と資源保有は異なるということです。全ての不足資源を自分自身が開発して「保有」しなければならないのか、あるいはその資源を保有している人(自分が将来必要な経験をしたことがある、能力・知識を持っている人)と関係を気づき、その資源を「使用」できればそれで済むのか、その見極めをしていただきたいと思います。