3自分を取り巻く環境の分析
3.1 これからの家族、家庭環境
(1)あまりに身近すぎる家族、家庭
自分にとって最も身近な環境は家族、家庭環境でしょう。また自分の人生、キャリアを考えるときに、自分のことだけを考えればよいのかどうか、そこを分けるのは家族、家庭との関係をどう考えるかということです。
こんなエピソードを聞いたことがあります。ある老夫婦が対談をしていて、話の流れの中で、ご主人が、実は自分には夢と言ってよいやりたいことがあったのだが、家族のことを考えるとリスクを負うことが出来ないので断念したというようなことを言いました。
ニュアンス的には、自分はそれだけ家族のことを考えていたのだということを伝えたかったようなのですが、奥さんの反応はご主人を戸惑わせました。奥さんの言うには、あなたの言い方ではまるで自分たち家族があなたの夢の実現を邪魔した、あなたは家族の犠牲になって自分の夢を実現できなかったというように聞こえるけれど、それは私たち家族にとって失礼だと言うのです。
自分にとってそんなに大切な夢ならば、是非、実現に向けた何かをやれば良かったし、出来なかったのならば、その理由を家族に向けるのは失礼だと言うのです。
ご主人には、やりたくても出来なかったご主人なりの言い分があるでしょう。しかし、この問題は大変、難しい問題です。なまじ家族は身近でありすぎるために、自分の人生ととても大きな関わりを持っています。また親(子)、父(母)、夫(妻)、兄弟(姉妹)というさまざまな役割や責任の問題も絡んできます。
そこで家族、家庭の問題は、自分の人生を取り巻く環境としての分析、認識と(自分にどのような影響を及ぼすかという視点)、その関係性をどのように考え、構築していくかという2つの側面(後者は次章で取り上げます)から考えていきます。
(2)自分の生まれ育った家族、家庭環境の影響
まず自分の生まれ育った家族、家庭環境に関わる大きな問題の1つは、親からの自立、具体的には経済的自立をいつまでに、どのようにして行うかということです。これは実家の経済的状況により変わってくるかもしれませんが、自分のキャリアを考えるときの重要な要素になります。
次に親が歳をとってくると、実家へ帰る、親の面倒を見るといった問題が大きくなってきます。実際、私の周辺でも、大都市での仕事を捨て、親元の地方都市へ帰って行った人がいますが、彼らは自分のキャリアについてはかなり悩んでいました。それは大都市と地方都市では仕事環境が大きく異なるからです。
(3)自分の家族、家庭環境の影響
次に自分の家族、家庭の形成ということがあります。具体的には結婚と出産です。
この問題は特に女性のキャリアには極めて大きな影響があります。場合によっては、仕事からリタイアし、キャリア形成を断念しなければならないかもしれません。あるいは共働きと言う選択をすることにより、家族の人数や子育ての方法も変わってくるかもしれません。これは男性にとっても大きな影響を持つことになるでしょう。
さらに具体的、現実的な問題としては住宅の問題があります。この問題は家計設計に決定的な影響を与えるので、その原資を生み出す仕事への取り組み、すなわちキャリア形成に大きな影響を与えることになります。
さらに子供の成長に伴って経済的負担が増してきます。子作り、子育ては自分のキャリアと密接に関係していることを自覚する必要があるでしょう。
さらに家族の転勤問題は、自分を含め家族全員に大きな環境変化を生じさせます。当然、住宅問題は発生しますし、生活環境、子供の転校、今までの地域社会との決別等、自分たちの生き方を変えるかもしれません。
いずれにしても、家族、家庭環境は人が生きていくときの基盤的環境です。それが、いつ、どのように変化するのか、それが自分たちにどのような影響を及ぼすのか、そしてそれが自分のキャリア形成をどう変えていくのか、この辺を見極めることが、今後の家族、家庭環境を分析することの重要な意味合いです。