3自分を取り巻く環境の分析
3.2 これからの会社環境・職場環境
(1)会社の戦略的方向性を見定める
職業人にとって次に大きな影響力を持つ環境は、自分の所属している会社・職場の環境でしょう。人生への影響はともかくとしても、キャリア形成への影響は計り知れません。
まず会社環境の変化を押さえるには、今後の自社の大きな変化の方向を確認することです。例えば海外進出、吸収合併といった非常に大きいテーマから、新規事業への参入、リストラの可能性といったテーマまで大小さまざまな項目を点検する必要があります。
これらの会社環境の変化が個人に対してどのようなインパクトを与えるのかというと、例えば海外進出を図る企業は、海外要員の必要性が増大しますから、現地採用を別にすれば国内から要員を派遣することになります。そのメンバーに選ばれれば、当然海外勤務になり、その期間によっては人生計画全体が影響を受けます。
逆に、海外要員に選ばれることがキャリア上有利だとするならば、選ばれるような能力、スキルを身につける必要があり、そのこと自体がキャリア形成の重要課題になります。
また吸収合併のように複数企業を統合する場合は、複数の文化やマネジメントシステムを統合することになるので、やがて仕事の進め方等が変わってきます。そして、このような変化に対応できない人はやがてリストラの対象になるでしょう。
要は、企業の戦略的方向性が変わるということは、その企業の必要とする人材像が変わるということであり、その人材像に合致する人がその会社で求められる人材になるということです。
また自分の所属する組織である職場は、当然、全社的変化の流れの中で、自らの使命、役割を変更していきます。あるいは仕事の進め方や仕組みが変わることもあります。
(2)重要事項の変化の見定め
いずれにしても次のような項目がどのように変化するかを見極め、自分なりに対応することが結果的にキャリア・アップにつながっていくのです。
○事業所、営業所、工場等の展開
これらの変化は自分の勤務地の変化につながる可能性があります。海外勤務を含む転勤は、ビジネスマンのキャリア形成にとって非常に大きな影響力を持っています。
○上司・部下等の人間関係の変化
特に外国人の上司(部下)、年下の上司(年上の部下)のように今までと大きく人間環境が変わる可能性があれば、それは結果的に必要能力・ヒューマンスキルが変わることを意味します。今まで形成してきた能力・スキルだけで十分なのか、自己点検が必要になります。
○情報環境の変化
モバイルコンピュータの活用、ペーパーレス化、エンドユーザー・コンピューティング等、情報環境の変化はビジネススタイルに直接影響を与えます。この変化に対応できないと、これからの高度情報社会でのスキル・アップは非常に困難です。会社・職場の情報環境が大きく変わる可能性がある場合は、情報リテラシーの向上は不可欠です。
その他、仕事の進め方・仕組みの変化、自分の使命と役割(担当職務)の変化等、何が、いつ頃、どのように変化をするのかを見定め、それにどのように対応するかがキャリアの形成に直結するのです。
(3)変化を見定める情報源
最後に問題になるのは、以上のような会社や職場の変化を、どのような情報を元に判断するかということです。自分の主観や思い込みだけではとんでもない勘違いを起こしかねません。
まず上司や同僚との会話の中から変化を感じ取ることが必要です。また日頃から会社の発信する情報や自社に関するマスコミ情報をまめにチェックし、それに対する自分の理解、認識を周囲の人のそれとすり合わせることが必要です。あるいは業界他社の人からの自社情報や経営の専門家からの自社情報を検討することも有効です。そして、これらの情報を元に、それが実現した場合の対応をあらかじめ考えておくのです。