6これからの人生の課題の確認
6.4 ビジョン実現課題と現状の問題解決課題
(1)企業における2つの戦略
多くの企業では経営戦略が策定され、それを実行することにより、企業変革を成し遂げ、また競争にも打ち勝って、さらなる成長を遂げようとします。
このような経営戦略は大別すると企業変革を成し遂げ、さらなる成長軌道に乗せるための「成長戦略」と、競合の動向を含む環境変化に的確に対応し、また目先の問題をうまく解決するための「競争戦略」に区分することができます。
また「競争戦略」における「競争」の概念は多岐にわたります。まずはライバル企業との競争です。次に業界に新規参入してきた企業との戦いもあります。さらには日々変化する市場、顧客のニーズとの競争の側面も無視できません。そして「獅子身中の虫」いわゆる社内の守旧派との戦いも重要です。そして、ここにあげた「競争相手」も自社にとってはひとつの環境条件です。つまり環境変化対応ということ自体が広い意味合いを持っているのです。
このように大別された戦略の内、「成長戦略」は企業ビジョンを実現するための手段を中心とし、「競争戦略」は環境変化対応を中心としますが、こうした成長戦略、競争戦略の発想は個人の課題設定にも、ほぼそのまま当てはまります。
(2)ビジョン実現の課題は生き方の質を変える課題
ビジョンとは将来の「ああなりたい」「こんなことをやりたい」という願望をベースに、自分の将来像を描いたものです。これは単に過去から現在までの延長線上に描かれるのではなく、自分が大きく変化、成長した姿を描き出したものです。
従って、いろいろな意味合いで現在の自分とビジョン実現後の自分は、質的に異なったものになるはずです。大きな目標を達成した自分、困難な課題をやり遂げた自分、こんな自分を想像してみると、その前までの自分と何かが変わるという感じが分かるのではないでしょうか(もちろんそうなってみないと実感は湧かないかもしれませんが)。
つまりビジョン実現のための課題は自分自身や自分の生き方の質を変えてしまうような課題が中心になります。企業における「企業変革課題」に相当する課題と考えてよいでしょう。
(3)現状の問題解決課題は環境に対応するための課題
それに対して現状の問題解決課題は、自分を取り巻くさまざまな環境に対応していくために、目先の問題を解決せざるを得ないというところから始まる場合が大半です。ある意味ではやむを得ず取り組まざるを得ない課題といってもよいでしょう。
またここで言う環境は、企業の場合と同様、広い意味合いで捉えることが必要です。ライバルや友人との競争環境、職場環境の変化、自分の気持ちの中の後ろ向きの部分との競争等々、自分を取り巻く「環境」を広く捉え、それぞれに対してどのような対応手段を取っていくのか、これが(3)の課題になります。
(4)2種類の課題のバランスが大切
今まで述べたように、人生の場合も課題は大別すると「自分のビジョン実現のために、自分の行き方の質を変えてしまうような成長戦略的課題」と「さまざまな環境変化に対応するために、やむを得ず取り組まざるを得ない競争戦略的課題」に区分けできます。
この両者の課題を見比べると、多分「成長戦略的課題」の方が魅力的で楽しそうな感じがするでしょう。それに比べて「競争戦略的課題」はあまりやりたくないけれど仕方がないなという感じでしょう。できたら「成長戦略的課題」だけに取り組みたいと考えるのは自然な感情です。
あるいは逆に「競争戦略的課題」は当面の課題として集中せざるを得ず、「成長戦略的課題」に対してはそれどころじゃないといった感じになるかもしれません。この場合には「競争戦略的課題」だけで十分だと考えるかもしれません。
しかし、どちらか片方だけの課題に偏ってしまってはいけません。人生はビジョンのような夢を追求し続けなければいけない側面と、現在の問題をしっかりと解決し、足元を固めながら生きていかなければならない側面の両者があるのです。常にこの2種類の課題のバランスを確かめながら、自分の課題を考えてください。