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――南場さんはマッキンゼーで最年少パートナーに就任しましたが、入社当初は成果を上げられず悩んだ時期もあったとか。 |
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南場:新卒で入社して以来「仕事ができなきゃ」というプレッシャーを感じつつ、その思いがカラまわりする毎日でした。2年目、逃げるように海外留学してMBA取得後、復職しましたが、復帰最初のプロジェクトでも成果が出せず、実は転職活動を始めていました。会社にそのことを話すと「もう1回だけやってくれ」と引き止められ、次のプロジェクトにも参加することになりました。そこで自分のスキルが急に上がったわけでもないのですが、先輩の手助けを受けることによって、結果的にお客様に満足していただく成果を残せました。 |
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――発想が切り替わったと言うことでしょうか? |
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南場:それまでは「自分が、自分が」と思っていたのが、「人の手を借りても成果を出せればいい」と考えるようになりました。それから仕事が面白くてしょうがなくなり、ノリノリのマッキンゼー・ライフとなりました(笑)。小さくてもいいから、成功体験を積むことが大切だと思います。人が人に教えることよりも、自分の成功体験から学ぶことのほうが大きいのではないでしょうか。 |
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――競争の激しい世界でパートナーにまで昇進した成功要因を教えてください。 |
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南場:ストイックにお客様へ価値を提供することを追求していて、ほかのことは何も考えていなかったからだと思います。当時、私はマッキンゼーに洗脳されていたんです(笑)。
どんな組織であれ生き残っている組織には、必ずその組織独自の良さがあるはず。それはその組織に染まってみないと学べませんし、いったん素直にそれを受け入れるべきです。キャリアというのは、自分の気持ち次第でどうにでもなってしまうものだと思います。私自身、復帰後すぐに転職していたら、次々と転職を繰り返す「ジョブ・ホッパー」になって、どこに行っても役に立たず、とんがっているだけの“転職市場のゴロツキ”になっていたかもしれません。 |
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――コンサルタント時代の経験やスキルで、起業してから役立ったものを教えてください。 |
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南場:そんなにありませんね。マッキンゼー時代の私の強みは「論理的思考による問題解決能力」と「妥協せずトコトンやる姿勢」でした。しかし前者は企業経営の5%ぐらいの話に過ぎません。議論してある結論を導き出しても、次の日から実行すると軌道修正が必要になる。その次の日には、さらに大きな軌道修正が求められる。それが企業経営というものです。
社長の資質を3つ挙げるとすれば、「リスクを取る胆力」と「弛まないエネルギー」、そして「壁を打ち破る気力」だと思います。私の強みの後者が今の仕事に生かされてるぐらいでしょうか。 |
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――話は変わりますが、人材戦略などについてもお聞かせください。採用面接で候補者のどんな点を見ていますか? |
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南場:3点あります。まず「正直」であることが何をするにも出発点。必要以上に自分をよく見せようとしていないかチェックします。そして「自信」と「謙虚さ」を見ます。何事かを成し遂げた経験のある人は、自信があり、とても落ち着いています。そして新しいことに対して謙虚になれるということも重要です。 |
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――採用で失敗したことはありませんか? |
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南場:当社のエンジニア第1号として入社して大活躍することになる人材を、不採用にしようとしたことがあります。なぜなら、まず顔が悪い(笑)。典型的なボッチャン顔で見るからにひ弱そう。しかも、東大法学部卒でMBA取得希望。私は“カチーン”ときて、私自身もトイレ掃除をしたり、みんなで雑巾がけもするベンチャー企業に向いていないと判断しました。ところが彼は「給料はいらないから仕事を手伝わせてくれ」と言ってきて、「タダならいっか」(笑)と来てもらったんです。すると、なんでもやってくれて、しかも仕事は完璧。やはり面接だけで人は分かりませんね。 |
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――御社はどんな人材を必要としていますか? |
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南場:前から変わらないのは、工夫する人、負けず嫌いな人。特に私は「工夫する人」が好きですね。自分で考える力があって、ルールにチャレンジできる人が、当社に向いていると思います。「負けず嫌いな人」というのは、周囲に勝った負けたという低い次元ではなく、自分自身に約束したことが実現できなかったとき悔しいと思う人のことを言います。
これから必要だと思うのが「自分の常識で考える人」。よく「ネットビジネスは、ナンバーワンしか生き残れない」などと、新聞記事を真に受けている人がいます。でも、その根拠を聞くと何も分かっていない人がほとんど。「確認したんかい?」って言いたいですよ(笑) 本当のビジネスチャンスは、通説と自分の常識のギャップのあいだにあると思います。周囲に流されない「フレッシュ・マインド」を必要としています。 |