―――加藤社長はバイク買い取り業界トップを走る上場企業の社長ですが、最初はアルバイトとしてこの業界に入ったそうですね。
加藤:宅建を取るため専門学校に通うようになり、同時にアルバイトをしようとバイクショップの洗車係として働き始めました。その頃この業界は「魚屋、八百屋、バイク屋」と言うぐらい、家族経営で成り立つ職人気質の世界でした。ところが私が入ったお店は若い経営者に率いられ、多角化経営を展開するなどバイク屋らしくない雰囲気がありました。それで私もこの仕事に興味を持つようなったのです。
―――それ以前はどんな仕事をしてたのですか?
加藤:「これからはパソコンの時代だ!」と思って高校の情報処理科を卒業したものの、あまり情報処理系が得意じゃなかったんです(笑)。それで深く考えないまま、なんとなく社会に出たというのが正直なところです。最初はインテリア卸の会社に勤め、倉庫管理の仕事をしていました。ドアノブやセメント、釘などを扱う地味な仕事があまり面白いとは思えず、半年ほどで辞めてしまいました。
次に「営業を学ぼう」と思って入社したのが、不動産やゴルフ会員権を販売していた会社です。飛び込みやテレアポによる新規開拓営業ですから、精神的にも肉体的にもハードでしたね。ここでロールプレイングや営業トーク、クロージングなど、徹底的に営業の基礎を叩き込まれました。この経験がバイクショップに入って生かされました。歩合給の比率が高い厳しい世界でしたが、不動産業界は学歴も関係なく、やればやっただけの評価が得られる業界でもありました。当時はバブル経済の真っ只中で勢いもあり、この業界で一生やっていこうと思い宅建を取ることにしたのです。
―――バイトとして入社しながら、バイク業界にのめり込んだのはなぜですか?
加藤:私はどんなことにも熱くなるタイプで、洗車なら洗車の「天下」を取ってやろうという気持ちがありました。洗車ひとつ取っても細かい隙間の部分まで「もの差し」を差し込んで汚れを丁寧に拭き取ったり、2台のバイクを並べて効率的に作業するなど徹底的に磨き上げました。すると実際にバイクが高く売れたりして、すごく楽しかったんです(笑)!
すると先輩社員からかわいがられるようになり、そのお店で仕入れの責任者を務めていた石川(秋彦・アイケイコーポレーション会長)が、仕入れに同行させてくれたり、「営業やってみろよ」と誘ってくれたんです。すると最初の1件目で上手く商談が成立して、石川が社長に「加藤って結構いいセンスしてますよ」って報告してくれました。認めてもらえるとうれしいじゃないですか。それでも不動産業界で営業していたのと比べれば、バイクの営業ははるかに楽なものでした。そんな未整備な業界にチャンスを感じるようになり、正社員にならないかという誘いに乗ったんです。
―――上手くチャンスを見つけたという感じでしょうか?
加藤:どこにもチャンスはたくさん転がっているのです。チャンスに気づくこと、そしてつかむことが重要です。私はいつも「1歩踏み出す勇気が大切」という話をしています。私も仕入れや営業をやらないかと誘われたとき、「アルバイトですから」と引いていたら、チャンスを失っていたでしょう。洗車係としてお店に入ったわけですが、やはり仕入というのは花形の仕事。普通に考えればやってみたいと思うはず。そこで素直に手を挙げたからチャンスをつかめたんです。
―――その後正社員になって新店舗を立ち上げたそうですね。
加藤:石川と2人でバイク買い取り専門店を立ち上げました。この計画を聞いて面白そうだと思ったのが、正社員になった理由の1つです。20代前半で新店舗立ち上げという責任ある仕事を任せられ、とても楽しかったですね。
買い取り専門店ですからまずバイクを集めなければなりません。いろいろ試行錯誤しながら広告を考え、電話が掛かってきたときのありがたみは、それはもう大きなものでした。バイク磨きにも気合いが入りました。買い取ったバイクは業者間オークションで販売していて、最も値が付く出品時間帯など考え抜き、逆算で作業を進め会場に持ち込むなど工夫を重ねました。おかげさまで業績は好調でしたが、残念ながら母体企業が倒産してしまったんです。そこで石川と2人で店舗を買い取り、再スタートしたのが当社です。借金して始めましたから身が引き締まる思いでした。ただ私は新店舗の立ち上げ当初から「全国展開したい」という夢があったので、借金を抱えたり、寝ずに働いても全然平気でした。 ―――その夢が御社をここまで導いてきたのでしょう。加藤社長にとっての「夢」とは?
加藤:夢は私にとって最も重要なキーワードです。社員にも「必ず夢を持ち、その夢は必ず実現させなければならない」と話しています。私は「成し得ぬ大きな目標よりも、成し遂げた目標の方がいい」という言葉が好きで、「目標は1カ月単位で細かく持つ」ようアドバイスしています。こうした小さな目標を達成してゆくうちに、自信が生まれ発想がよりポジティブになり、夢も次第に大きくなってゆくものです。当社も1店舗の買い取り専門店としてスタートして以来、店舗を増やし業績を拡大し、今では「バイク業界を変える」という大きな夢を掲げることができるようになりました。
夢を決して最後まであきらめないでください。人生どんな状況でも巻き返すチャンスはあるものなのです。 プロフィール
1971年東京生まれ。高校の情報処理科を卒業後、インテリア卸会社、不動産会社などを経て、91年バイクショップにアルバイトとして入社。その後正社員となってバイク買い取り専門の新店舗立ち上げに従事する。94年に石川秋彦氏と共同で同店舗を譲り受け、メジャーオート有限会社を設立。98年にグループ会社を統括する株式会社アイケイコーポレーションを設立する。2005年6月ジャスダック上場を果たす。
<会社概要>
業界最大手のオートバイ買取専門店「バイク王」を運営。最近ではオートバイ車両小売販売店「i-knew(アイニュー)」や2輪車専用駐車場を運営する「パーク王」など、オートバイライフを総合サポートするビジネスを展開している。
「バイク王」の店舗外観 無料出張買い取りサービスや24時間365日申込受付、全国統一基準によるオープンな価格査定など、バイク買い取りに特化したサービスがユーザーから支持されている。2006年3月現在、全国46店舗を展開中
「i-knew(アイニュー)」相模原店 ファッション性に富んだグッズを取り揃えるなど、ライフスタイル提案型のバイクショップになっている
バックナンバー
vol.33 高橋健志氏 (株式会社ベアーズ)
vol.32 宇佐神慎氏 (株式会社翔栄クリエイト) vol.31 宮崎陽子氏 (株式会社ギャレリアコレクション) vol.30 吉原直樹氏 (株式会社アルテ サロン ホールディングス) vol.29 小松武司氏 (株式会社サティスファクトリーインターナショナル) vol.28 本庄恵子氏 (株式会社ヒューマンビークル) vol.27 梅澤英行氏 (株式会社ティー・ユー・ビーアソシエイツ) vol.26 永井好明氏 (アールプロジェクト株式会社) vol.25 車田直昭氏 (ドットコモディティ株式会社) vol.24 岩本眞二氏 (スタイライフ株式会社) vol.23 兼元謙任氏 (株式会社オウケイウェイヴ) vol.22 小室淑恵氏 (株式会社ワーク・ライフバランス) vol.21 渡邉哲男氏 (比較.com株式会社) vol.20 吉田英治氏 (株式会社フレッシュテック) vol.19 松田憲幸氏 (ソースネクスト株式会社) vol.18 加藤義博氏 (株式会社アイケイコーポレーション)
vol.17 森正文氏 (株式会社一休)
vol.16 橋本雅治氏 (株式会社イデアインターナショナル) vol.15 田口弘氏 (株式会社エムアウト) vol.14 小方功氏 (株式会社ラクーン) vol.13 西野伸一郎氏 (株式会社富士山マガジンサービス) vol.12 安田佳生氏 (株式会社ワイキューブ) vol.11 森下篤史氏 (株式会社テンポスバスターズ) vol.10 遠山正道氏 (株式会社スマイルズ) vol.09 宋文洲氏 (ソフトブレーン株式会社) vol.08 高橋透氏 (株式会社ラストリゾート) vol.07 南場智子氏 (株式会社ディー・エヌ・エー) vol.06 出張勝也氏 (株式会社オデッセイコミュニケーションズ) vol.04 経沢香保子氏 (株式会社トレンダーズ) vol.03 菊川暁氏 (株式会社ガーラ) vol.02 松田公太氏 (フードエックス・グローブ株式会社) vol.01 穐田誉輝氏 (株式会社カカクコム) |