―――環境関連のビジネスを展開していると聞きました。事業内容を詳しく教えてください。
小松:お客様の廃棄物処理コストの削減やリサイクルの推進、廃棄物の一元管理といったサービスを提供し、お客様から管理手数料や成功報酬を頂いています。ほとんどのお客様が、店舗や工場で排出されている廃棄物の種類や量を正確に把握しておらず、基本的に現状分析から我々がサポートし、“見える化”によって明らかになった廃棄物の種類や量に基づき、廃棄物の一元管理やコスト削減、リサイクルといったサービスに展開しています。
―――具体的な成功事例をご紹介頂けませんか?
小松:2つほど例を挙げましょう。野菜を加工するある野菜工場では、カットや皮むきなどの工程で、収穫した野菜の約40%がロスとなり、すべて有償で処理していました。当社はそうした廃棄物を飼料として販売できるよう販売先を開拓し、同時に工程の見直しをアドバイス。費用をかけて処理していた廃棄物が、商品として収益源の1つになりました。
もう1つはマグロの解体業者の事例です。刺身や寿司のネタにもなるマグロの身は、1キロあたり2千円以上という高値で取引されています。一方、頭と尾の部分はキロ数十円という極めて安い値段で、魚の餌として売られていました。そこで当社は頭の部分を「カブト煮」の素材として販売することを提案。幅広い飲食店とネットワークを持つ当社は、安定供給できる素材として飲食店に持ち込み、解体業者とのマッチングに成功しています。 ―――驚いたことに、会社設立当初は「カフェ経営」をしていたとか。
小松:友人と2人でフランチャイズに加盟し、茅場町にカフェをオープンしたのが当社の出発点です。茅場町は会社員の数も多く、開店当初の売り上げは絶好調。2号店を開こうと考えていた矢先に、道の向かい側に大手チェーンによる競合店がオープンし、瞬く間に売り上げが20%もダウンしました。とたんに自分たちの給料分すら稼げなくなってしまったのです。
そこでカフェを友人に任せ、私は「釜めし」のデリバリー店舗を始めました。スタート初月こそ好調だったものの、コーヒーに比べリピート頻度が低く、翌月は売り上げが100万円近くダウン。その後も売り上げが落ち込み、アルバイト全員に辞めてもらいました。最後は1人で注文を取って調理し、自分でバイクで配達するまで縮小し、半年で撤退。結局残ったのは1000万円におよぶ借金でした。 小松:そうした厳しい状況でしたから、コスト削減には力を入れていました。清掃や電気代などすべてのコストを見直し、かなりの効果を出していたのですが、最後に残っていたのが廃棄物の処理コストでした。ところが他社に見積りを依頼すると、値段も聞かずに「今の業者でいいのでは」といい、まともに取り合ってもくれません。そのとき「これは面白い!」とひらめいたんです。この業界に革命を起こせば、自分の名前が後世まで残る―――。そんな思いから廃棄物ビジネスへの参入を決意しました。
―――起業する以前の会社員時代も、今とはまったく異なる業界だったようですね。
小松:大学のゼミで流通を勉強していたこともあり、新卒でイトーヨーカ堂に入社しました。同期入社で3000人もの社員がいたのですが、自分が一番だと思い込んでいました(笑)。ところが、上板橋店の惣菜売場や牛乳などのデイリー品売場に配属されると、それほど自分がパッとしていないことに気づきます。同社はPOSなどの先進的なシステムが導入されていて、あまり人の能力というものに依存しないのです。「自分はシステムの中で生かされない」と、入社半年ほどで辞めました。
―――最近、若年層の早期退職が話題になっています。小松社長のお考えをお聞かせください。
小松:Will(希望)や目標があるなら、転職しても構わないと思います。私は学生時代から独立志向が強く、「営業ができれば、それだけで食べてゆける」と聞き、営業をやろうと思って転職しました。「どうせならバリバリやらせてくれるところがいい」と考え、厳しそうな業界である不動産や旅行業界を志望。求人雑誌に3ページの広告を出稿し、熱いメッセージを発信していた旅行会社に転職しました。多額の費用を投じて広告に3ページも使うのであれば、人にもたくさん投資する会社だと考えたのです。
ところが入社初日から350本ものテレアポをやらされ、1件のアポも取れませんでした。「こんなやり方じゃダメだ」と思った私は、社長に「もっと効率的にやったほうがいい」と進言。すると社長は「下手に自分を持っている奴は、すぐに根を上げてしまう。何も考えないでやってみたらどうだ」と言うんです。ここで脱落者扱いされたくないと思った私は、社長に「やります」と宣言し、徹底的にうまい人の真似をしました。声のトーンや話の順序、すべて真似してゆくうちに、3カ月でトップになれたのです。よく「オレ流」などといいますが、それは徹底的に上手い人を真似て、基本ができてからだと思う。ピカソだって若いころのデッサンは、ものすごくうまいんですよ。 ―――これから転職を考えている人に、小松社長からメッセージをお願いします。
小松:「成功」の反義語は「失敗」ではなく「挑戦しないこと」。失敗したらまたやり直せばいいんです。失敗を恐れず、チャレンジしてください。成功しようとすると足がすくみがちですが、変化しようと考えれば思い切って踏み出せますよ。
転職をお考えの方には、次の2点をアドバイスしたい。1つは何事にも基礎が大切だということ。基礎は泥臭い実践の中で育まれますが、いかにハードな仕事をしたかとか、いかに大変な経験をしたかなど、泥臭さの“深さ”とはまた違うと思います。基礎を鍛えるにはある程度の時間が必要であり、どんなに大変な仕事を経験しても、それが短期間ならばあまり評価できません。やはり5年ぐらいの長い時間をかけて、じっくり育てたものとは重みが違うのではないでしょうか。 もう1つは自分のマインドに自信を持ってほしいということです。マインドがあればどんなに泥臭い仕事でも乗り切れるし、スキルなどなくても後から付いてくるものですよ。 現状に満足せず一歩踏み込んでください。強い意志さえあれば、結果は自力で勝ち取れるはずです。 プロフィール
1965年広島県生まれ。90年3月専修大学商学部卒業、同年4月イトーヨーカ堂入社。半年ほどで同社を辞め、学生を主なターゲットとする旅行会社に転職。営業として実績を残し、96年サティスファクトリーインターナショナル設立、カフェ経営に着手。その後業態変更して、廃棄物一元管理などの環境関連サービスに特化する。
<事業コンセプト>サティフファクトリーインターナショナル社は、廃棄物マネジメント、リサイクルマネジメント、リスクマネジメントの3つを核に、幅広い環境経営コンサルティングを実践している。
<サービス概要>環境保護が叫ばれる中、同社は廃棄物一元管理、リサイクルへの対応、廃棄物処理コストの削減といった実践的なサービスを提供している。
バックナンバー
vol.33 高橋健志氏 (株式会社ベアーズ)
vol.32 宇佐神慎氏 (株式会社翔栄クリエイト) vol.31 宮崎陽子氏 (株式会社ギャレリアコレクション) vol.30 吉原直樹氏 (株式会社アルテ サロン ホールディングス) vol.29 小松武司氏 (株式会社サティスファクトリーインターナショナル) vol.28 本庄恵子氏 (株式会社ヒューマンビークル) vol.27 梅澤英行氏 (株式会社ティー・ユー・ビーアソシエイツ) vol.26 永井好明氏 (アールプロジェクト株式会社) vol.25 車田直昭氏 (ドットコモディティ株式会社) vol.24 岩本眞二氏 (スタイライフ株式会社) vol.23 兼元謙任氏 (株式会社オウケイウェイヴ) vol.22 小室淑恵氏 (株式会社ワーク・ライフバランス) vol.21 渡邉哲男氏 (比較.com株式会社) vol.20 吉田英治氏 (株式会社フレッシュテック) vol.19 松田憲幸氏 (ソースネクスト株式会社) vol.18 加藤義博氏 (株式会社アイケイコーポレーション)
vol.17 森正文氏 (株式会社一休)
vol.16 橋本雅治氏 (株式会社イデアインターナショナル) vol.15 田口弘氏 (株式会社エムアウト) vol.14 小方功氏 (株式会社ラクーン) vol.13 西野伸一郎氏 (株式会社富士山マガジンサービス) vol.12 安田佳生氏 (株式会社ワイキューブ) vol.11 森下篤史氏 (株式会社テンポスバスターズ) vol.10 遠山正道氏 (株式会社スマイルズ) vol.09 宋文洲氏 (ソフトブレーン株式会社) vol.08 高橋透氏 (株式会社ラストリゾート) vol.07 南場智子氏 (株式会社ディー・エヌ・エー) vol.06 出張勝也氏 (株式会社オデッセイコミュニケーションズ) vol.04 経沢香保子氏 (株式会社トレンダーズ) vol.03 菊川暁氏 (株式会社ガーラ) vol.02 松田公太氏 (フードエックス・グローブ株式会社) vol.01 穐田誉輝氏 (株式会社カカクコム) |