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会社員時代、トップセールスとして鳴らした森下社長ですが、入社当初は営業成績が上がらず悩んだ時期もあったそうですね。当時の森下社長はどんな会社員でしたか?
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森下:ひと言でいうと“文部省に洗脳された青年”だったね。学校では「種をまけば芽が出る」と教えるけど、実際の社会では「種をまいても芽が出るとは限らない」というのが正しい。新人時代、芽が出ると信じ「他社製品との経費比較」や「性能比較」を必死に覚えたけど、成績は全然上がらなかった。お客はそんなもの望んでなかったんだ。そんなことも分からないバカ青年だったよ。
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その状況を抜け出した転機は? |
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森下:売れない日々が続いたある日、公園のブランコに座り、カミさんが作ってくれた弁当を食ったんだ。そしたら、情けなくなっちゃってさ、涙が出てきた。やっぱり俺にこの仕事は無理だと思って、会社を辞めることにした。
でもその前に、社内に「トップセールス」という人たちがいるんなら、行きがけの駄賃に、一度そのテクニックを見たいと思ったんだよ。それで営業の名人たちの、カバン持ちをさせてもらった。 |
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やっぱり名人の営業はすごかったよ。ある人は、相手がおとなしい人と見るや、勝手に事務所に入り込んで、事務机からハンコを持ち出し「ハンコをここに押すだけでいい」って言って契約書を書かせちゃう。別の名人は、相手が「要らない」っていうのに、製品を持ち込んで何時間も土下座。結局最後には買ってもらう―――。
ホントに驚いたよ。それまでは、相手が「要らない」「また今度」といったら、俺は素直に「はい、そうですか」って引き下がってた。ところがトップセールスは、相手を見て瞬時に、自分の営業手法で売り込める人を見極める。営業の名人とは「人間をよく知っている人」なんだよ。 |
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それを学んで、すぐにトップセールスになれたのですか? |
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森下:それが全然、成績が上がらんかった(笑)。すごい技だけど、とても真似できない。俺の場合は、たまたま新製品が売れて、調子に乗れただけなんだ。昔から俺は調子に乗るタイプだったからね。しばらくすると、部下が2〜3人付いたんだが、奴らにカッコいいところを見せたくなる(笑)。「俺が手本を見せてやる」といって、普段なら自分も尻込みする有名百貨店に飛び込んだり、なかなか会えない社長アポを次々と入れた。部下に教えるために、本を熱心に読んで勉強したね。部下が増えるたびにエスカレートして、そのおかげで自分の力がかなり付いた。 |
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トップセールスになって何か変化はありましたか? |
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森下:営業活動と平行しながら、会社を改革してやろうと思ったんだ。
会社に黙って「営業所」を作ったこともあるよ。静岡支店は寿司を作る機械も売ったんだが、東北地方でも売ることになった。でもその都度、電車で出張すると旅費がかかる。だから部下を北上(宮城県)のアパートに住ませ、“北上支店”と名乗らせた。
しばらくすると仙台支店のお客が「お宅の北上支店からこの商品を買った」という。だけど仙台の連中は「北上支店なんてございません」と答える。でもお客の言うことを聞いてみると本当に“北上支店”があった(笑)。本社に「勝手に支店を作るな!」と大目玉くらって、何度も「始末書」を書かされた。でも自分にしてみれば、悪いことをしている気は全くないから、なんで始末書を書くのか、意味が分からなかったよ。 |
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何度も会社の上層部とぶつかったそうですね。上司との正しい“ケンカの仕方”を教えて頂けませんか? |
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森下:まず、ケンカの仕方には「自分の生き方」に従うやり方と、「サラリーマン」としてのそれがあるんだ。
まず「自分の生き方」について言うと、たまたま昨日、上場企業の創業社長が10人ぐらい集ったけど、そのうち約半分が、上司とケンカして会社を辞めている。彼らは会社のために仕事をやりすぎて、上司に疎(うと)まれて辞めた。「生き方」として、とても正しいと思う。
だけど「サラリーマン」のケンカの仕方はちょっと違う。サラリーマンには「会社にとって正しいことをするな。上司がやってほしいことをやれ!」という大原則がある。逆に聞くけど、もし、あなたが某乳業メーカーの社員だとして、上司である常務から「牛乳パックの日付を書き換えろ!」と命令されたらやるかい? |
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やはり、拒否すると思います・・・。
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森下:それじゃ即クビだよ(笑)。そういうときはこうする。「常務、分かりました。でも3カ月だけ時間をください。自分が死に物狂いで業務改善して、日付を変えなくて済むよう問題を解決させます」って宣言するんだ。すると3カ月後、もし問題を解決し切れなくても、
「すいません、常務。目標を達成できませんでした。やはり日付は変えましょう。しかし、私は部下にも洗いざらい事情を話して、パートの連中も含め、全員一丸となって死ぬ気でトライしました。ですから日付を変えた場合、彼らが暴れたり、ネットの掲示板に書き込むかもしれませんよ。部長はそれでもいいんですか?」と言える。
言葉の重みが違うでしょう。ただ拒否してもダメだよ。ケンカするにしても“生きてる男が勝負をかける”気概がほしい。
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